実践で身に付くことが多い営業スキルにおいて、事前に身に付けたい人もいるのではないでしょうか。営業スキルは千差万別ですが、基本的な方法や流れは共通しているので教育によって一定のスキルを習得できます。しかしながら、技術の発展や顧客のニーズの多様化により営業活動の方法やアプローチも変わっているため営業の教育方法を見直す必要があります。
この記事では、時代の流れに伴う営業活動の変化に触れながら、営業教育の方法やポイントについて解説します。
目次
営業の変化
営業担当者は直接顧客に訪問し、地道に信頼関係を構築することが主流でした。信頼関係を構築するためには商品・サービスの情報を提供するだけではなく、雑談を織り交ぜながら人間性を認識してもらう必要があります。人間性を認識してもらい顧客に信頼されることで、自分自身を売り込むことにつながります。
その後、インターネットの普及により、売り込むためには商品・サービスを提供するだけではなく、顧客のニーズに沿った情報を提供することが重要になりました。顧客は必要な商品・サービスを簡単に入手できるようになったため、価値ある情報を提供する必要があります。
そして、新型コロナウイルスの蔓延によって外出自粛などの行動制限が設けられたため、営業スタイルを変えざるをえなくなりました。行動制限により顧客訪問型の営業スタイルからリモートでのWEB商談にシフトしたため、営業担当者もリモート環境下での営業活動に切り替えることになりました。
WEB商談は地理的な制限が無いため効率的に営業活動を行なうことができますが、人間性が認識されづらい点も否めません。WEB商談による営業の変化は大きく、営業スタイルも見直さなければなりません。
時代の流れに合った営業で結果を出すためには、それぞれ解決したい課題に沿った営業の教育手法を選択することが重要だといえるでしょう。
営業の教育手法
ここでは、5つの営業の教育手法について説明します。
- OJT研修
- 商談同行
- ロールプレイング
- Off-JT
- オンライン研修
それぞれ説明します。
OJT研修
OJTは“On The Job Training”の頭文字を取った略称であり、実務を通じて指導する教育手法です。営業活動は実際に実務を行なわないと伝わらないことが多々あります。実務を通じて計画的に指導するために、職場の上司や先輩がトレーナーとなり、ノウハウやスキルを直接伝えます。
トレーナーがノウハウやスキルを伝える際の一例として、
- Show:先輩社員が実際に電話をかけている様子などの手本を見せる
- Tell:トークの仕方やポイントを説明する
- Do:実際に新人に電話をかけさせる
- Check:反省点や改善点を伝える
の4段階の職業指導法が有効です。
実務を通してスキルやノウハウを直接伝えられるため、実践的な指導ができ効率的に教育できるというメリットがあります。トレーナーはスキルやノウハウを伝えるために業務に関する知識を改めて深く学ぶようになるので、結果的に組織全体の業務効率や生産性向上にもつながるでしょう。
商談同行
営業部門におけるOJT研修の一環として、商談同行も挙げられます。商談同行は上司や先輩が一緒に顧客との商談に臨むことであり、状況に応じたコミュニケーションの取り方の指導法です。基本的な営業マナーや振る舞い、商品説明の流れなど商談同行によって多くのことを学べます。
新人営業は不慣れな商談によって不安を抱えてしまうかもしれませんが、一緒に商談に臨むことで不安が解消されます。蓄積した不安はモチベーション低下にもなりかねないので、商談同行で活発なコミュニケーションを図ることも重要です。
新人営業に商談をさせる場合には、商談前の準備段階から自分で行うように指示をしましょう。商談の質を高めるためには事前準備が重要なので、身をもって学ばせる必要があります。WEB商談の場合は実際に商談に参加させるだけでなく、商談映像の録画をすることで新人営業が後から確認できるようにしましょう。
ロールプレイング
ロールプレイングは営業活動の事前練習だけではなく、サービス力やコミュニケーション力向上に有効な教育手法です。上司や先輩が顧客側となり、営業担当者に営業活動の実演をさせることで商談の疑似体験ができます。
さまざまな営業シーンを想定することでサービス力やコミュニケーション力が身に付き、実際の現場で冷静に対処できるようになります。営業未経験者に実施するのであれば基礎的な業務対応スキルの習得が目的であり、反復練習により業務に慣れさせることが重要です。
ロールプレイングには、
- インサイドセールスの架電/受電
- 商談(オンライン商談)
- 決裁者への提案
- クロージング
- アフターフォロー
があります。新人営業であれば、下記項目も組み込んでおくことがおすすめです。
- 名刺交換
- アイスブレイク
Off-JT
Off-JTは“Off The Job Training”の頭文字を取った略称であり、職場から離れて座学によって基礎的なスキルを学ぶ教育手法です。座学を通じて営業の方法論や商品知識を事前に学ぶことで、効率的に営業活動ができるようになります。
商品知識を事前に学んでおくことで自信を持って顧客対応ができるようになり、根拠に基づいた営業活動につながります。業務に関わる内容を中心に学び、知識やスキルの基盤を作る際に有効な教育手法だといえるでしょう。
Off-JTを営業教育に取り入れることで、
- 見積書・請求書の作成方法
- 発注処理
- 納品方法
- 営業報告
などの社内業務や資料作成のほか、契約に関する法的な知識を習得する点で有効です。
オンライン研修
パソコンやスマホからWEB会議ツールや研修ツールを利用して受講する研修であり、ネット環境があればどこでも受講可能な点が特徴です。テレワークの推進により新人研修が難しい場合に有効な教育手法であり、基礎的なビジネスマナーやトーク力を身に付けることができます。
オンライン研修サービスにはさまざまな種類があり、
- 月額利用料を支払えば研修動画が見放題
- 自社のオリジナル教材も配信可能
など多様な特徴があります。個々の学習の進捗状況や成績を管理できる機能もあるため、一人ひとりに合わせた人材育成が可能です。
研修参加に伴う移動時間が無くなるため業務調整がしやすく、参加者の負担が軽減されます。研修施設に参加者が集合する必要がないため、コロナウイルスなどの感染症拡大リスク軽減にも有効です。
効果的な営業教育のポイント
ここでは、効果的な営業教育の3つのポイントについて説明します。
- 営業活動のマニュアル化
- 営業プロセスの可視化
- ロールプレイングの精査
それぞれ説明します。
1. 営業活動のマニュアル化
営業活動のノウハウは共通する部分が多いため、誰が見ても伝わりやすいようにマニュアル化しておくことが重要です。マニュアルを確認することで教育内容をいつでも振り返ることができ、営業活動や教育時間の効率化につながります。
営業活動のノウハウが効率的に理解できるため、経験が少ない営業担当者でも即戦力として活躍しやすくなるでしょう。
2. 営業プロセスの可視化
営業プロセスとは顧客へのヒアリングや提案を通じて受注へと至る一連の流れであり、フローや図式にして目に見えるようにすることがポイントです。営業プロセスを可視化することで営業活動を最適化でき、営業経験が少ない営業担当者が効率的に学べます。営業部門内で情報共有がしやすくなるので、組織全体の営業力強化につながります。
3. ロールプレイングの精査
ロールプレイングは効率的に営業活動を学ぶ上で重要な教育手法ですが、漠然と回数をこなすだけでは効果が弱いです。反復練習を行ない「できた箇所」「改善点」などを気付かせて改善を求めることが重要です。また、よくできた点はしっかり褒めることによって営業担当者のモチベーション向上になり、自信や生産性向上にもつながります。
ロールプレイングを精査することで改善点に気付くことができ、多角的な視野で営業活動に臨むことができるようになります。
まとめ
企業の競争力を高めるためには営業力が重要であり、優秀な営業人材を育成するためには効率的な教育手法が欠かせません。効率的な営業手法は効率的にノウハウやスキルを伝えて、組織全体の業務効率や生産性向上につなげることが重要です。
インターネットの普及によって顧客は必要な商品・サービスを簡単に入手できるようになったため、営業担当者は商品・サービスを提供するだけではなく情報提供力が求められています。提供するための情報は場当たり的に身に付くものではないため、ロールプレイングやOff-JTも活用するようにしましょう。
組織全体の営業力強化のためには経験が少ない営業担当者の営業力強化が必須であり、少しでも効率的に教育する必要があります。営業活動や教育時間の効率化のためには、営業活動のマニュアル化や営業プロセスの可視化は必須だといえます。