雑学

世界のCEOランキング1位から学ぶ企業の成長戦略

ラース・レビアン・ソレンセン」という方をご存じでしょうか。

この方は
アメリカの経営学誌であるハーバード・ビジネス・レビューが発表した
世界のCEOベスト100」の中で2015年の1位を獲得したCEOです。

このランキングは、永続的な成功に重点を置いて作成された世界各国のCEOのランキングです。具体的には、社長就任後の株式総利回りと時価総額の変化のランキングに、環境・社会貢献・ガバナンス(ESG)を加味して作成されたものです。

つまり、ソレンセンは世界で最も“出来る社長”ということになります。

ソレンセンが経営するのはノボノルディスクというグローバル製薬会社です。デンマークを本拠とし、世界75 カ国に約 40,300 人の社員を擁し、製品は 180 カ国以上で販売されています。
日本ではあまり名前を知らない方も多いかもしれませんが、日本法人もあり売上を伸ばしています。2015年の国内売上高は過去最高の890億円となり、前年比で成長率6%を達成しました。

ノボノルディスクの成功要因は一体何でしょうか。
またノボノルディスクの戦略をマネすれば、同様に成功することができるでしょうか……?

ノボノルディスクが成長を続けている理由は、過去の失敗をもとに
知識があって得意な分野に集中して取り組んだ
ことと言われています。

自社が得意とする分野に特化するという戦略は、一見簡単で当り前のように思えます。

しかし、実際は成功する企業もあれば失敗する企業もあります。

同じ方針であるにも関わらずなぜ差が出るのか……。

理由は下記の3点にあると考えます。
・市場に成長性があるか
・長期的目標と具体的な戦略があるか
・社員との連携が取れていたか

ノボノルディスクの具体的な戦略と、その戦略は汎用性があるのかどうかを見ていきます。

○市場の成長性

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ノボノルディスクが特化した分野は糖尿病に対する医薬品の分野です。社長就任当初は多角化を目指したそうですが、20年ほど前からは糖尿病に注力しています。
現在は、会社全体の売り上げの80%を糖尿病に頼っています。

この例だけを見れば、分野の多角化よりも一分野に特化する方が成功するということでしょうか。
一概にそうとは言い切れません。

例えば、現在日本で得意としている事業にも関わらず撤退する企業が増えている分野があります。

それはゲーム機器分野です。
撤退理由は、家庭用ゲーム機器が売れなくなったからと言います。

下のグラフはゲーム市場規模の推移です。

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オンラインゲームの普及により家庭用のゲームは年々売上を落としています。

一方、ノボノルディスクが注力した分野、世界の糖尿病の患者数の推移をみると

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(国際糖尿病連合「糖尿病アトラス」のデータより作成)

年々増加していることが分かります。
もちろん医薬品の需要もそれに伴い増加していきます。成長し続ける分野であったからこそノボノルディスクは売上を上げ続けることができました。

しかし、いくら自社に力があるといっても前者の例のようにその分野の市場が縮小してしまっては売上が落ちるリスクは高まります。

経営方針を決める立場の人間は、自社が関わっている分野の成長性を見極め、注力すべきか他に目を向けるべきか判断する必要があります。

○長期的目標と具体的な戦略

ノボノルディスクでは
社会的要素や環境的要素は財務的要素につながる
とし
長期スパンで自社の価値を最大化させること
を企業の社会的責任としています。

実際に行った戦略として、「世界糖尿病財団」という独立したNPO法人を立ち上げました。
糖尿病治療が遅れている国々で活動するためです。売上の一部を財団にまわすことで、単体での売上を下げる国があったとしても、市場を広げることで結果的に自社の利益をプラスにしました。

この考え方は、規模は違えどどの企業にも適応するのではないでしょうか。
自社が長期的に活動できる可能性を強化することで、はじめはコスト高であっても継続して利益を上げることが可能です。

赤字になってしまえば本末転倒ですから、短期的目標ももちろん必要です。
ただし、短期的目標はあくまで長期的目標を達成するための手段です。

短期的目標を先に設定してしまうと、内容が伴わない場合もあります。
過去日本では短期的に利益を上げるために、リストラ等のコストカットや事業強化を実施し赤字をだした企業もあります。
戦略のない短期的目標は、目先の利益を目的とした、手段の消費にしかならない場合もあります。

○社員との連携

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ソレンセンは何も決めるにも社員らの合意を取り付ける義務があるとしています。

合意を得られなければ反対意見はすべて取締役会に報告され、すべての社員の意見を平等にみて会社の施策を決定しています。経営者と社員に隔たりをつくることが業務の障害になると考えているのです。

また、社員には自社の仕事が世界にどのような影響を与えるかを常に示し、そのことに関し喜びを感じてもらいモチベーションを上げています。
「仕事をすれば人の命を救うことになる。これが何よりのモチベーションになる。」としています。

此方の方法には賛否両論あるかと思います。
日本では、ワンマン社長は失敗するというコラムや本が出版されている一方で、社員の目を気にしてやりたいことができない経営者に向けた相談窓口も開かれているのです。

また、モチベーションの向上方法としてノボノルディスクがあげている方法は、どの企業でも通用するものではありません。人命救助という名目があるのはごく一部の企業です。

ただし、利用できる部分はあります。
自社の事業の理解という点で、ノボノルディスクでは実際に患者を会社に招いた交流会を行っているそうです。
どの企業であっても、普段お客様と直接かかわることがない部門の人間が、お客様と交流し自身の仕事の結果を把握することで意識改善につながる可能性は高いです。

社員のモチベーションが低くても、しっかり売上を作るシステムを作ればそれでも良いという考え方の経営者もいらっしゃいます。
ただ、IT技術が発達してから、技術や市場がめまぐるしく変化しています。その中で新しい発見を得るために個々人の意識も重要になっているという見方もあります。

過去の成功例だけを見てもどちらが正しいとは言えませんが、個人的には自社のスタイルを見つめ直し経営者・社員が納得できる働き方をしている企業が成長しているのではないかと考えます。

■重要な点は

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上記比較は、本当に一部の事例です。
事業の規模や、市場の状況によっては立場が逆転する可能性があります。

ただ、どのような状況においても共通する部分もあります。

ソレンセンはインタビューの中で「他社でも共通する自社のイノベーション戦略」について以下のように話をしています。
「自社の強みは何か、自社にできることは何か、どんなリスクを負うべきか、という問いに、どんなにつらくても正直に答える必要があります。
その後それらの答えに基づいて、野心的でありながら到底達成不可能ではないビジョンを描けるか試してみるのです。そのためには、参入したい産業や市場に対する深い理解が問われます。」

上記のポイントは、経営者であっても一営業社員であっても適応されることだと思います。

・自身が行っている仕事への理解
・自身が活動している市場への理解

その中で、具体的な目標を決め、チームで取り組んでいく。
チームがないものに関しても、他部署や取引先の企業など連携する場所は多くあります。

今回は、一例の紹介でしたが
各企業の取り組みは業界や業種国によって様々です。

是非いろいろなスタイルを見て、自身の活動にプラスにできる部分を探してみてください。

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