近年、モノを保有する「モノ消費」から、モノやサービスが持つ価値を利用する「コト消費」へと変化しています。それに伴い多くの企業では、必要なサービスを定額制で提供するサブスクリプション型のサービスへの転換が始まってます。これはサービスを提供する企業だけではなく、自動車やファッション業界など、従来はモノを提供してきた企業にまで浸透しつつあります。
この記事では、そのようなサブスクリプション型のサービスの利益維持・増加に欠かせないカスタマーサクセスの概要となぜ重要視されてきたのか解説します。
目次
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、「顧客の成功に導くための取り組み」を指します。
顧客に能動的(自発的)に関わって行く事で「顧客の成功を実現」する事です。
「能動的」というのが大きなポイントになります。
同じ意味ではありませんが、カスタマーサポートという業務があります。
ある企業の商品を購入すると、顧客へのサポートやアフターフォローは基本的に多くの会社が行っています。カスタマーサポートセンターがやっているの能動的ではなく受動的(受け身)である事がほとんどです。大抵顧客から連絡があるのは商品の不良や使い方がメインです。顧客が課題を提示し、その課題に対して迅速に対応します。しかしカスタマーサクセスは顧客から連絡があった時はもちろんですが、顧客の課題を先回りして解決する、顧客と密に能動的に関わって、顧客の現状を把握して、顧客が成功出来るよう対応して行くような存在であります。
カスタマーサクセスの業務内容
業務内容ですが、「オンボーディング」、「アダプション」、「エクスパンション」、「プロダクトフィードバック」の4つに分類されます。
導入段階の場合は「オンボーディング」、次段階の活用は「アダプション」、利用拡大の活用は
「エクスパンション」と呼ばれています。顧客からプロダクトに関するフィードバックを受け、改善のためのPDCAを回すのが「プロダクトフィードバック」となります。
「オンボーディング」では、顧客が実際に契約してから、導入支援を行うフェーズです。営業マンからの引継ぎを元に、顧客の現状を把握しながら、導入直後の操作方法や設定、使用方法などのサポートを行っていきます。また、導入当初には発生するかもしれない設定等のトラブルに対してのサポートをメール等で迅速かつ正確に対応していきます。
次の段階としては、「アダプション」になります。アダプションでは、導入後に、顧客のニーズ等を分析しながら、本格的にサービスを運用して利活用を促して行く事になります。自社の製品やサービスが顧客の業務で認識され活用され、定着させる事は安定した取引が生まれると同時に、利用率を維持でき、継続して利用される可能性を高めるのです。
続いての段階としては、「エクスパンション」になります。エクスパンションでは、クロスセル・アップセルと2つの形式でエクスパンションを行うことが基本であります。大抵、サブスクリプション型のサービスですと、初期コストをかなり下げている為、売り上げや利益を確保する為には積極的にエクスパンションが必要なのです。
最後の段階は、「プロダクトフィードバック」になります。顧客に継続で利用してもらい、顧客の満足度を上げる為には、不具合を直して、顧客の声に耳を傾けて改善を行っていく必要があります。これらのフィードバックは、満足度の向上に寄与して、現顧客の継続利用に繋がります。そして、顧客の声からの改善点などは他の利用者にも知れ渡り、新規顧客獲得になっていくと思います。改善の為にはPDCAも行なう必要があります。どの段階の内容でも同様ですが、能動的に行う事が求められています。顧客が何を求めているのか?を理解して次の段階への橋渡しを行う事が必要とされています。
カスタマーサクセスが重要視されてきた背景
大きく分けて2つの背景があります。
サブスクリプション型ビジネス(SaaSなど)の普及
カスタマーサクセスは、SaaSを始めとしたサブスクビジネスを中心に注目を集めてきました。顧客が必要とした場合において、必要な機関の利用料を支払うビジネスでは、
顧客が継続する事で、収益が発生します。そして、その顧客が「ずっと使い続けたい」と思ってもらえるようにする為に付加価値を与えて、製品の良さを伝え、使い続けている顧客に
成功体験をしてもらう必要があります。当然営業マンがフォローをしている訳ですが、
全て出来るとは限りません。顧客の導入へのサポートや顧客からの気づきをもらうのに、顧客と一緒に隣で走ってくれる人(カスタマーサクセス)が必要となった訳です。
営業手法の変化
営業活動の変化があります。買い切り型ビジネスの場合、契約する事が出来ればゴールですが、サブスクの場合、顧客のニーズを把握して叶え、期間が終わっても継続してもらう事が必要なのです。継続してもらえないと、収益が途絶えてしまいます。
当然、顧客との話の中でサブスク以外の話題もあるでしょうし、継続する為の他社との違いや条件等もあがるはずです。その話を営業にエスカレーションして、フォローして品質の向上に繋げるようにします。とりわけ、サブスクにおいては、顧客との密接な関係が何より大切である事を顕著に表われています。
仮に、連絡をこまめにくれるカスタマーサクセスの人が良い印象だとしたら、人だけでなく、製品にも良い印象を持つと思います。しかし、連絡をしない、約束を守らないなどのようなカスタマーサクセスの人だとすると、どうでしょうか。人への不信感だけでなく製品にも会社にもあまり良い印象を持たないと思います。
カスタマーサクセスがなぜ重要なのか
あなたが新しいモノ等を購入したとします。使ってみて何も問題ないようでしたら構いませんが、不明な事等あったら、どうしますか?ネットで調べてみるのもあると思いますし、周囲に使っている人がいれば聞く、詳しい人がいれば相談する事もあると思います。
また、企業のサポートセンターに問い合わせをする事もあります。しかしながら、「使うのを止める」事もあり得ます。しかし企業からすると一番避けたいのは使うのを止める事です。
一度でも面倒くさいとか使うのを止めたいと考えてしまったら、中々修復に向かう事が難しいです。企業としては困った事に対してサポートセンターを設けています。サポートセンターを設けても大抵はクレーム等のきつい言葉が交わされております。サポートセンターの人からすれば、このようになる前に何かしら対策を出来なかったのか?と考えるスタッフもいるはずです。
そのような考えがあってカスタマーサクセスが重要となって来たのです。サポートセンターのスタンスとしては受け身で、問い合わせがあれば迅速に対応して顧客の悩みを解決して行きます。問い合わせがない場合は特にやる事がないと申し上げても言い過ぎではありません。カスタマーサクセスでしたら、顧客の不満があっても、こちらから連絡をする訳なので、顧客の怒りを拡大させる事はありません。一番良いのは、顧客が問い合わせをする前に連絡をして「お困りごとありませんか?」と一声かける事で、顧客からすると親切なスタッフがいるなと思うはずです。その役割を担うのがカスタマーサクセスです。
まとめ
カスタマーサクセスは、顧客に成功体験を重ねて行く事で、結果として自社の利益に繋げる営業活動です。
その為には顧客へ受け身の姿勢ではなく、能動的に対応をして行く事が肝要であると思います。最終的には人へのフォローや対応は、正しい顧客理解とその人にあった施策で決まると思います。