カスタマーサクセスは、様々なビジネスを成功に導くことで、SaaSをはじめとする顧客満足度を可視化し、ビジネスを促進します。長期的な成果を実感できるサービスの場合、導入当初は反響が少なく、3ヶ月以上の時間が必要になることもありますが、ビジネスの段階に応じた業務改善により、継続的な運営が可能となります。
このようにサービスやプロダクトの種類や特性、支援段階に応じて、適切な指標(KPI)を設定することで、業務改善や見直すべき箇所が可視化され、短時間で業務改善につながり結果を出すことができます。
本記事はカスタマーサクセスの重要な指標のひとつである売上維持率について解説していきます。
目次
売上維持率について
売上維持率 (NRR:Net Retention Rate)を確認することで、既存の顧客からの収入の増減を確認することが可能な指標です。数年間ビジネスを継続している事業は指標により、前年や前月などを比較し売り上げの流れを確認することが可能です。
顧客が商品・サービスを継続的に利用するSaaSビジネスでは収益の上昇下降を可視化して確認できる重要な指標です。
売上維持率が重要視される理由
カスタマーサクセスには、様々な指標が存在します。顧客満足度、顧客継続率、顧客ロイヤルティーなど、顧客を中心に据えた指標が多く使われます。しかし、その中でも特に重要な指標の1つが売上維持率です。カスタマーサクセスに使用される他のKPIについても知られたい方はこちらをご参考にしてください。
カスタマーサクセスの重要な指標大全!サービスにあったKPIとは
なぜなら、売上維持率はビジネスにとって直接的な影響を与えるからです。顧客がサービスや製品を利用し続けることで、収益が維持されます。顧客継続率とは異なり、売上維持率は顧客が離れた後に戻ってくることを想定しておらず、常にビジネスにとって必要な収益を生み出すことができるという点で重要です。
さらに、売上維持率は、ビジネスの成長にとっても非常に重要な役割を果たします。新規顧客を獲得することも重要ですが、既存の顧客を維持し、顧客からの口コミや紹介によって新たな顧客を獲得することが、長期的な成長を促すためには不可欠です。そのため、売上維持率を高めることは、ビジネスにとって非常に重要な課題となっています。
また、売上維持率は、カスタマーサクセスの取り組みの成果を評価する指標としても使われます。カスタマーサクセスの目的は、顧客が製品やサービスを最大限に活用し、継続的な利用につなげることです。そのため、売上維持率が高くなれば、カスタマーサクセスの取り組みが効果的だったということが示されるのです。
以上の理由から、売上維持率をKPIに置くことは、ビジネスにとって非常に重要な意味を持ちます。カスタマーサクセスは、顧客との関係性を深め、顧客のビジネス成功に貢献することで、売上維持率の向上につながるよう取り組むことが必要です。
売上維持率がとくに重要な企業
NRRはSaaSビジネスにおいて重要な指標です。NRRを高水準で継続しているかどうかを可視化し、今後の将来的なビジネスのビジョンを準備したり、満足度の高いサービスを提供できているかどうかを判断することができSaaSビジネスにおいて利用者の傾向を確認できるので、既存顧客からの収益を維持し、更なる事業展開にも重要な指標と言えます。
既存顧客が継続的にサービスを利用することで、新規顧客のための宣伝広告費などに高いコストを費やす必要もなく、顧客の維持によって現状維持から更なるビジネス戦略を担い新規顧客を増やしていくことが可能となりNRRが重要といえます。
顧客維持率の計算方法
NRRを算出する計算方法を理解する上で、まずはGRRなどの違いについて理解する必要があります。
NRRとGRR・ARR・MRRについて
顧客の継続率を確認可能な指標は、NRRが代表的ですがGRRなど顧客による収益を確認することも可能です。
GRRは通称、Gross Revenue Retention(Rate)で、総収入維持もしくは総収入維持率なので、今までの収支を可視化した指標となります。
NRRと比較するとアップグレードによる収益増加を含まず、既存の顧客のサービスの利用状況ではなく既存顧客からの収益を表した指標となります。
MRRは月次経常収益なので、毎月の収益を確認することが可能な指標です。
ARRは月次経常収益を確認するMRRに似て、月間でなく、年間の経常収益を確認可能です。SaaSビジネスでは期間にあわせてMRRやARRの指標を確認することが可能です。
Downgrade MRRは、1ヵ月の間に定額のコースにダウングレードした顧客からの損失額となり、Churn MRRは、1カ月の間に解約した顧客の損失額になります。
割り出し方について
計算方法は初めの月はMRR:200万円、Expansion MRR:40万円、Downgrade MRRが5万円の場合に、Churn MRR:20万円のケースで計算すると
NRR「200万円+40万円)―(10万円+20万円)」÷200万円=2.05(105%)
最終的にMRRよりも10万円収益となり、既存サービスの成長性が高くなっている事を伺うことができます。
収益が下がっている場合の一例
初めの月がMRR:200万円、Expansion MRR:40万円、Downgrade MRR:20万円、Churn MRR:40万円の場合のNRR
(200万円+40万円)―(20万円+40万円)}÷200万円=0.9(90%)
この計算式から、月初MRRから20万円減となり、収益が減っているので、今後の改善策を見出す必要があります。
NRRの数値変動が意味する要因の一例
売上維持率が高い
・商品やサービスを継続的に使い続ける顧客が多い
・顧客が商品やサービスに満足しているか確認できる
・ユニークな商品やサービスであるか知ることができる
・売上げが順調かどうかを確認できる
売上維持率が低い
・顧客離れしている傾向
・顧客が商品やサービスに飽きている
・商品やーサービス、企業のサポートに不満がある
・アップセル、クロスセルにつながらない
NRRのベンチマーク
既存の顧客が今後も、自社のサービスを使い続ける事で収益が増える数値SaaS、NRRは会社の収支の上り下りを常に確認可能な指標です。
初めの月のMRRが1,000万円の際に、NRRが110%の際は、新規の顧客がいなくても、1年後のMRRは収益は1,100万円に増える事を理解することが可能です。
またNRRが90%の場合には10%減となっているので、将来的に対策をとらないと収益が減ってしまう傾向にあります。
NRRの健全な数値は、一般的には100〜115%が適切とされています。
これを裏付ける調査として、Open View Advisorsが発表した2021 Financial and Operating Benchmarks Reportによると、NRRが100%以下だったのは全体の36%、100〜115%が39%、115%以上が25%となっています。
売上維持率が下がる要因
現在顧客維持率が低くなっている際には、そのための対策を練る必要があります。
市場での競合他社とのシェア
SaaS市場は競合が増える事で競争率が高まります。既存尾クライアントが製品やサービスを他社に移行するなど、市場の動きは常にアクティブです。そのためサービスを提供する際の価格設定やサービス内容が重要視されます。
SaaSビジネスは競争でシェアを獲得するために、常に製品の革新やマーケティング戦略の改善を追求する必要があります。
サービスへの付加価値
顧客はより多くの選択肢を持っているため、SaaSベンダーは顧客のニーズを理解し、それに合わせたサービスを提供する必要があります。しかし、競合他社が同じ製品やサービスを提供する場合、付加価値をつけてさらに魅力的なサービスや商品を提供する必要があります。
継続的に使い続けてくれる顧客
SaaSサービスを提供している企業は、長期契約の顧客とはロイヤルティを確立することが可能ですが、頻繁にサービスを使用しない顧客の場合には顧客にとっても意義がないサービスとなってしまいます。
顧客が競合他社のサービスに乗り換えることで、既存の契約を解除することができ、顧客は他社の短期契約に乗りかえる事も可能です。
顧客のニーズに適応していないケース
顧客は時代とともに変化します。顧客のニーズに適応していない際にはサービスを追加、改善する必要があります。SaaS提供企業は、製品の改善を行うことにより、新規の顧客を獲得しやすくなり、また既存の顧客にとっても今よりも価値を得ることが可能ですが、製品の開発に費用がかかります。そのため、SaaS提供企業は、製品開発に十分な資金や製品開発に時間を費やす必要があります。
売上維持率を増やすためには
NRRを向上させることでSaaSビジネスを成功に導き、良い方向に導くことが可能です。
カスタマーサクセスの実行
NRRの数値が100%以下の場合には利用者が減っているか、サービスの利用者が利用しなくなっています。
顧客に既存の商品・サービスの利用価値がないことや、新規顧客獲得に向けてのマーケティングなどが成果を上げられていないことが理由として上げることができます。
この問題を解消するため、顧客にに向けてアプローチを行うカスタマーサクセスを実行すると、現状を改善するために効果的です。
商品・サービスのイノベーションを追加するなどして使い勝手を向上させ、宣伝などマーケティングも積極的に行う必要があります。
カスタマーサポートは顧客からのニーズに対応し、現状を改善する事が可能ですが、半面、ダウングレード、解約をしてしまう顧客への対処はできません。
ダウングレードや解約に対応するために、企業側から積極的に顧客との接点を形成することが可能なカスタマーサクセス業務を実行する事で改善策を見出すことができます。
販売価格を再設定し、サービス内容の変更
顧客離れをしているケースではサービス内容を変更すれば流れを食い止めることができません。サービスが価格に見合っていない場合も考えられます。
この際には解約した顧客へのアンケート実施を行うなどして顧客のニーズを確認しながらニーズにこたえることができるようなサービスを提供することができます。
アンケート結果を分析し提供しているサービスの内容の見直しや価格の改定を検討しましょう。
アップセル
顧客の単価を向上させるためにアップセルを実行します。
顧客満足度調査やNPSにより対象顧客を見極め、既存の顧客に対して働きかけるアップセルはNRR向上には欠かせません。
客単価を向上させることで、総売り上げを高めることができます。
まとめ
今回はNRRやSaaSビジネスに活用できる指標の利用の仕方やビジネス上でのメリットについて説明しました。顧客価値を高める事で売上を伸ばし、NRRの指標から「企業とサービスの成長性」を確認し、NRRの計算方法を理解することが可能です。カスタマーサクセスにてNRRを上昇させビジネスの安定を図り、将来的にもビジネスを成功に導いていきましょう。
弊社ではカスタマーサクセスの管理ツールの提供や導入支援などを行っているため、お気軽にお問い合わせください。